一次データと出典

在院日数と病床経営のデータ

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最終更新: 2026年7月29日

全国の入院医療の基礎値

日本の入院医療に関する基礎値(2024年度基準)
項目 数値 出典 時点
概算入院医療費 19.2兆円 厚生労働省「医療費の動向」 2024年度
推計新規入院件数 1,561.6万件 厚生労働省「医療費の動向」 2024年度
推計平均在院日数(全入院) 28.2日 厚生労働省「医療費の動向」 2024年度
入院医療費の1日あたり平均 43,486円 厚生労働省「医療費の動向」 2024年度
DPC対象入院の加重平均在院日数 11.38日 厚生労働省「DPC退院患者調査」を電子点数表に結合 2024年度
結合したDPC分類数/対象退院数 2,247分類/約904.4万件(結合率 約97.2%) 同上 2024年度

全国平均28.2日とDPC平均11.38日が大きく異なるのは、全国値に精神・療養・慢性期・回復期などの非DPC入院が含まれるためです。

「平均1日短縮」は、全員が1日短くなることではない

平均在院日数が1日縮むという状態の中身は、約1割の患者さんが大きく短縮し、残る9割は変わらないという分布です。ここを取り違えると、削減額を大きく見誤ります。

平均1日短縮を実現する患者構造(中央ケース)
項目 数値 出典 時点
短縮の候補となる退院 約332.4万件(全退院の36.8%) 統合試算 §4.2 2026年7月
実際に短縮する退院 約86.5万件(全退院の9.57%) 統合試算 §4.2 2026年7月
短縮に成功した例の平均短縮日数 10.45日 統合試算 §4.2 2026年7月
短縮しない退院 約90.4% 統合試算 §4.2 2026年7月

なぜ「平均日額 × 1日」で計算してはいけないか

実際に短縮されるのは、多くの場合退院前の最後の1日または数日です。手術・入院初期の検査・初期治療といった高額な資源投入は削られません。DPCでは在院が長くなるほど1日あたりの点数が下がるため、末尾の1日の価値は入院全体の平均日額より小さくなります。

平均在院日数1日短縮によるDPC支払減の推計(評価方法による違い)
評価方法 推計額 意味
DPC包括部分のみの厳格推計 約1,354億円 期間IIIを超えた削減日を0円として数える下限
期間III点数による代理(中央推計) 約1,682億円 期間III超も期間IIIの日額で近似
全退院の最終日を一律に削るモデル 約1,943億円 短縮不能例を考慮しない単純化
単純平均日額モデル 約6,791億円 平均日額をそのまま使用=過大

中央推計(約1,700億円)は、単純平均モデルの約4分の1です。出典: 統合試算 §4.3。

短縮幅を広げると、削減額は比例以上に増える

平均在院日数の短縮幅別・DPC支払額への影響と全国への外挿
平均短縮 DPC(期間III代理) 全国への機械的外挿 入院医療費19.2兆円比 削減1日あたりの単価
1日 1,676億円 約2,894億円 1.51% 約18,534円
2日 3,352億円 約5,788億円 3.01% 約18,534円
3日 5,057億円 約8,732億円 4.55% 約18,640円
5日 8,741億円 約1兆5,092億円 7.86% 約19,328円
10日 2兆1,614億円 約3兆7,320億円 19.44% 約23,898円

短縮幅が1〜2日では主に長期入院末尾の低い日額が削られます。5日以降は対象が短期側へ広がり、より高い日額の病日を削るため、削減1日あたりの単価が上がります(非線形性)。出典: 統合試算 §5.2・§5.3・§5.4。全国外挿は非DPC入院にも同じ単価を当てた参考値で、5日・10日では不確実性が大きくなります。

400床の急性期病院での病床回転

国全体では支払額が減る一方、空いた病床を新規の患者さんが使えば、病院単位では収益と利益が増え得ます。同じ「在院日数短縮」でも、国と病院で結論が反対方向になります。

試算の前提

400床急性期病院モデルの前提値
前提 採用値 出典
病床数400床統合試算 §7.1
病床利用率75.68%厚生労働省「病院経営管理指標」
現状の平均在院日数11.379日DPC加重平均
患者1人1日あたり入院収益81,929円厚生労働省「病院経営管理指標」
年間の利用病床日/入院件数約11.05万患者日/約9,710件上記からの算出
限界利益率58.1%医療経済実態調査(固定費率と同率)
新規患者の充足率/追加固定費100%/0(中央試算)統合試算 §7.1

結果

短縮幅別の追加入院・収益・利益と、損益分岐となる充足率
平均短縮 追加入院/年 同/日 純入院収益増 医業利益増 損益分岐の充足率
1日936件2.56件6.75億円3.92億円約21.1%
2日2,071件5.67件14.94億円8.68億円約19.4%
3日3,476件9.52件25.04億円14.55億円約17.8%
5日7,611件20.85件54.21億円31.50億円約14.8%

出典: 統合試算 §7.2・§7.4。成果を保証する数値ではありません。 「損益分岐の充足率」は、空いた病床がこの割合以上埋まらなければ収益が減るという下限です。

限界利益率を変えた場合

限界利益率別の医業利益増
平均短縮 限界利益率35% 50% 58.1%
1日2.36億円3.37億円3.92億円
2日5.23億円7.47億円8.68億円
3日8.76億円12.52億円14.55億円
5日18.97億円27.11億円31.50億円

出典: 統合試算 §7.5。5日以上の短縮では、医師・看護師・手術室・検査・救急・薬剤・退院支援などの増員や設備投資が避けられず、58.1%の限界利益率を維持することはできません。

貴院の規模で試算する

退院調整にかかっている工数

退院支援業務の工数と、AI導入後の目標
項目 数値 出典 時点
患者1人あたりの調整工数 7〜10時間 センパイナース調べ 2025年
退院推奨日の算出にかかる時間(AI利用時) 15〜30分 退院支援AI 要件定義 2025年10月
在院日数の短縮(導入6か月時点の目標) −5〜10% 退院支援AI 要件定義(KGI) 2025年10月
支援員1患者あたり工数の削減(同) −20〜30% 退院支援AI 要件定義(KGI) 2025年10月

下2つは目標値であり、達成を保証するものではありません。 効果は大学研究室との共同研究による第三者検証を進めています。

国際比較での位置づけ

平均在院日数の国際比較
区分 日本 比較対象 出典・時点
全入院ベース 26.3日 韓国 17.5日 OECD(2023年)
急性期治療入院 15.7日 OECD平均 6.5日 OECD(2023年)

全国平均・DPC平均・OECD急性期平均は定義が異なるため直接比較できません。 日本の全国平均28.2日から10日短縮しても18.2日で、韓国(17.5日)より長い水準です。出典: 統合試算 §9。

この試算の限界

数値を読むうえで、必ず併せてご確認ください。

  • DPC期間IIIを超える入院は出来高評価で、公開集計からコード別・病日別の実額は取得できません。厳格額(0円扱い)と中央代理額(期間III点数で評価)を併記しています。
  • 医療機関別係数を反映していません。個別の病院では、基礎係数・機能評価係数の実値に置き換える必要があります。
  • 短縮可能日数は公開分位点から再構成したモデルであり、重症度・併存症・社会的入院・退院先の確保・家族支援を直接扱っていません。
  • 病床以外の処理能力を考慮していません。救急外来・手術室・ICU・検査・薬剤・医師・看護師・退院支援が追加症例を扱えなければ、病床は埋まりません。3日以上の短縮では、この制約が中心になります。
  • 患者アウトカムを評価していません。再入院・死亡・ADL・QOL・家族負担・退院後の療養場所は本試算の対象外です。費用だけでなく30日・90日のアウトカムを同時に見る必要があります。
  • 在院日数の短縮=国民医療費の削減ではありません。空床が新規入院で埋まれば、病院収益は増え、システム全体の支出も再び増える可能性があります。

出典一覧

  • 厚生労働省「DPC導入の影響評価に係る調査(退院患者調査)」 mhlw.go.jp
  • 厚生労働省「診療報酬改定・DPC電子点数表」 mhlw.go.jp
  • 厚生労働省「医療費の動向」 mhlw.go.jp(PDF)
  • 厚生労働省「病院経営管理指標」 mhlw.go.jp(PDF)
  • 厚生労働省「医療経済実態調査」 mhlw.go.jp(PDF)
  • OECD「Health at a Glance 2025」Hospital activity / OECD Data Explorer, Hospital aggregates data-explorer.oecd.org
  • 「日本の入院医療費・在院日数短縮・病床回転の統合試算 ——2024年度一次データを用いたDPC支払モデルと400床急性期病院の経済モデル」(2026年7月26日)。当ページの「統合試算 §◯」はこの資料を指します。

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